
【フルコミ保険代理店と控除率】社保控除の「見せ方」の違い、手取り額への影響について解説
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このコラムの内容
社会保険料と手取りの関係って結局何なの?
「コミッション率90%と75%、どちらの保険代理店がお得だと思いますか?」
こう聞かれて、即答できるお客様、いえ、募集人の方はどれくらいいるでしょうか。おそらく多くの方が「90%の方がいいに決まっている」と答えるのではないかと思います。しかし、実はこの問いに正しく答えるためには、社会保険料の仕組みを理解している必要があります。
保険代理店に転職する募集人の方から「社会保険料に気をつけた方がいいと聞いたけれど、具体的に何を見ればいいのかわからない」というご相談をいただくこともあります。実はこの疑問の背景には、そもそも社会保険という制度自体への理解不足と、保険代理店によってコミッション率の見せ方が異なるという2つの要因が絡み合っています。
なお、このコラムでは混同を避けるため、保険会社から保険代理店に支払われる手数料を「代理店手数料」、保険代理店から募集人に支払われる手数料を「コミッション(控除率)」と表記して整理していきます。この2つの言葉は混同されやすく、実際の転職相談の場でも「手数料」という言葉が何を指しているのか、話し手と聞き手でずれてしまっていることが少なくありません。
この前提を踏まえた上で、社会保険の基礎知識から、代理店選びで本当に見るべき実質手取りの計算方法まで、具体的な数字とともに解き明かしていきます。特に後半では、獲得代理店手数料の水準別に実際の手取り額をシミュレーションし、どのような場合にどちらのコミッション体系が有利になるのかを数字で検証します。読み終える頃には、コミッション率という表面上の数字に振り回されない判断軸が身についているはずです。
尚、保険代理店の社会保険の潜脱行為についてはまた別の議論となりますので、別のコラムを参照してください。
▼参考リンク
生命保険代理店の「社保潜脱」とは何?なぜ起きた?日経新聞報道、社会潜脱について解説と考察
意外と知らない社会保険の基本
「社会保険」とは健康保険と厚生年金保険のこと
そもそも「社会保険」という言葉が何を指すのか、正確に説明できますでしょうか。実務では、健康保険と厚生年金保険をあわせて「社会保険」と呼ぶのが一般的です。FPの資格試験でも学ぶ範囲ではありますが、実際に資格を持っているFPの方でも、この基本的な定義を曖昧に理解しているケースは意外と多いというのが、私たちが日々の転職相談の中で感じている実感です。
広い意味では雇用保険や労災保険(労働保険)も含めて「社会保険制度」と呼ぶこともありますが、給与明細で「社会保険料」として控除されているのは、狭義の健康保険・厚生年金保険を指していると考えて差し支えありません。まずはこの整理を頭に入れておくことが、この先の内容を理解する土台になります。
料率は労使折半で標準報酬月額の約15%(合計約30%)
社会保険料は、会社と個人がそれぞれ半分ずつ負担する「労使折半」が原則です。協会けんぽ東京支部の最新の保険料額表をもとに具体的な料率を見てみましょう。
健康保険料率は9.85%ですが、40歳から64歳までの介護保険第2号被保険者に該当する方は、これに介護保険料率1.62%が加わり、合計11.47%になります。さらに令和8年4月分からは子ども・子育て支援金として0.23%が加わります。厚生年金保険料率は18.3%です。
これらを踏まえると、40歳未満の方は健康保険9.85%+支援金0.23%+厚生年金18.3%=合計28.38%で労使折半となり、**本人負担・会社負担ともに約14.19%**です。40歳から64歳の方は介護保険料が加わるため合計30.00%となり、**本人負担・会社負担ともに約15.00%**になります。さらに会社側は、被保険者の負担がない子ども・子育て拠出金(厚生年金の標準報酬月額ベースで0.36%)も別途負担しています。つまり会社負担分の総額は、40歳未満で約14.55%、40歳以上で約15.36%になる計算です。この「約15%」という水準が、この先の議論の重要な鍵になります。
具体的なイメージを持っていただくために、標準報酬月額が30万円の40代の方を例に考えてみましょう。この場合、本人負担分は月額約4万5千円、会社負担分も同じく月額約4万5千円前後になります。皆さんが良く見る給料明細で言うと、給料額面から本人負担分の約4万5千円、その他所得税と住民税が控除されて額が「手取り額」となります。
年間に換算すると、本人・会社それぞれが50万円以上を負担している計算です。この金額感を知っているかどうかで、後述する保険代理店のコミッション体系の見え方は大きく変わってくるはずです。
標準報酬月額は4〜6月の報酬で決まる仕組み
社会保険料の計算のベースとなるのが「標準報酬月額」です。これは毎年4月・5月・6月に支払われた報酬の平均額をもとに決定され(定時決定)、その年の9月から翌年8月までの1年間、この標準報酬月額に基づいて社会保険料が固定されるという仕組みになっています。
一般的な会社員であれば、給与の額面から個人負担分の社会保険料、さらに所得税・住民税が控除された金額が、実際の手取りとしてお給料に振り込まれています。ご自身の標準報酬月額に対して実際にいくらの社会保険料が引かれているのか気になった場合は、年金事務所のホームページに一覧表が掲載されているので、誰でもすぐに確認することができます。FPとしてお客様のライフプランを設計する際にも、この一覧表を実際に見せながら説明すると、理解が格段に深まるのでおすすめです。
雇用保険・労災保険という別枠の存在
社会保険(健康保険・厚生年金保険)とは別に、雇用保険と労災保険という「労働保険」も存在します。雇用保険は労使双方が負担しますが、その負担割合は折半ではなく、事業主側の方がやや重い設計になっています。一方、労災保険は全額事業主負担で、労働者側の負担は一切ありません。
このように、給与から控除される保険料には複数の種類があり、それぞれ計算方法も負担割合も異なります。FPを目指す方や保険業界で働く方であれば、こうした周辺知識まで押さえておくことで、お客様への説明にも自信を持って臨めるようになるでしょう。また、標準報酬月額には上限があり、健康保険は月額1,390,000円、厚生年金保険は月額650,000円が上限となっている点も、後ほどのシミュレーションで重要な意味を持ってきますので、ここで頭の片隅に置いておいてください。
こうした社会保険の基礎知識は、教科書的には知っていても、実際に自分の給与明細や報酬シミュレーションに当てはめて考えたことがある方は意外と少ないのではないでしょうか。次の章からは、この基礎知識をベースに、保険代理店という特殊な報酬体系の世界に話を進めていきます。
保険代理店選びで社会保険料に注意すべき理由
「社保に注意」と言われても何を見ればいいかわからない
転職活動中の募集人の方から「保険代理店を選ぶときは社会保険料に注意した方がいい、と周りから聞いたけれど、具体的に何を確認すればいいのかわからない」というお声を多くいただきます。最近は「社保はどうなっていますか?」と聞かれることもありますが一方で求職者さん自身が社保について正しく理解していないことも決して珍しいことではなく、むしろ大多数の方が同じ壁にぶつかっていると言っても過言ではありません。
なぜこうした混乱が起きるのでしょうか。理由は大きく2つあります。1つ目は、そもそも前章で解説したような社会保険料の仕組み自体を知らないこと。2つ目は、保険代理店によって、採用時に説明するコミッション率の見せ方が異なることです。この2つ目のポイントこそが、実は最も見落とされがちで、かつ実質的な手取り額に大きく影響する部分になります。
会社負担分を報酬原資から控除する会社と別途負担する会社
フルコミッション型の保険代理店では、面接や採用説明の段階で「うちのコミッション率(控除率)は◯%です」という説明を受けることが一般的です。しかし、この時点で社会保険料についての説明がなされないケースが少なくありません。
実際に支給額を計算する段階になって初めて、コミッション率から算出した支給原資をもとに、会社負担分の社会保険料が原資から控除されるパターンと、原資とは別枠で会社負担分の社会保険料を会社側が負担するパターンの2つが存在することが判明する、というケースがあるのです。
この違いは、消費税の表示方法に例えるとわかりやすいかもしれません。値札が税込み表示なのか、税抜き表示でレジに行って初めて総額がわかるのか、という違いと本質的には同じ構造です。どちらもコンプライアンス違反というわけではなく、あくまで見せ方の問題です。しかし社会保険料は会社負担分だけで実質約15%にもなるわけですから、コミッション率の見せ方の違いは、保険代理店選びにおいて非常に大きなポイントになってくるのです。名目上のコミッション率の数字だけで判断してしまう方は少なくありませんが、本来見るべきは実質的な手取り額であるはずです。この点まで踏み込んで比較検討できているでしょうか。
たとえば、コミッション率90%とコミッション率80%を提示する2社があったとして、単純に数字だけを見れば90%の会社の方が好条件に思えるかもしれません。しかし、90%の会社が会社負担分の社会保険料を原資から控除する方式で、80%の会社が別途会社負担であれば、実質的な手取りは逆転する可能性もあります。この「見えている数字」と「実質的な手取り」のギャップこそが、保険代理店選びで最も注意すべきポイントだと言えるでしょう。
知らずに入社するとミスマッチが起きる
会社負担分の社会保険料を告知したコミッション率から控除する会社は、コンプライアンス違反を犯しているわけではありません。歩合級などインセンティブ部分の算定方法は会社内のルールであり、間違ったことをしている訳ではありません。(もし給料の社会保険料の会社負担分を従業員の給与から控除しているなら法令違反となります。)しかし、こうした仕組みを知らないまま入社してしまうと、「思っていた報酬率と違う」ということがミスマッチや不信感につながってしまう恐れがあります。
さらにこの社会保険料に関する理解を、保険代理店のリクルーター自身が正しく持っていないケースもあります。お金やコミッション率よりも、教育体制や人間力、集客力といった要素を重視する求人企業側と、報酬の内訳を細かく知りたい求職者側との間で、価値観のギャップが生じてしまうこともあるでしょう。
名目コミッション率より実質手取りで見るべき理由
会社員とフルコミ募集人、給与決定ロジックは同じ
こうした問題は、フルコミッションという特殊な報酬体系だからこそ表面化するものです。一般的な会社員のように基本給を前提とする働き方の場合、採用面接の段階で雇用する企業側は、その人を雇用した場合に発生するトータルコスト(会社負担分の社会保険料を含む)から逆算して、提示する給与額を決めています。
つまり、転職活動で「年収500万円」の提示を受けたとすれば、企業側からすると、その人には会社負担分の社会保険料を含めて年収600万円相当の人材としての価値があると判断してオファーをしているわけです。多くの方はこの仕組みを意識せず、会社員であれば会社負担分の社保が目に見える形で控除されることはないため、フルコミッションの保険代理店で会社負担分の社会保険料が控除されると聞くと、なんとなく損をしたような気分になってしまうのでしょう。しかし、一般の会社員もフルコミッションの保険代理店の募集人も、その人の人件費(企業が認める価値、つまり原資)から社会保険料などのコストを差し引いて給与額面が決まるというロジック自体は、本質的に変わらないのです。
それでも起きる違和感、フルコミ特有の構造
では、なぜフルコミッションの世界だけで、この会社負担分の社会保険料が「問題」として意識されやすいのでしょうか。それは、一般的な雇用契約では採用時点ですでに会社負担分がコストとして織り込まれており、雇用される側からは見えにくい構造になっているのに対し、フルコミッションの場合はコミッション率という「見える数字」が先に提示されるからだと考えられます。
見える数字があるからこそ、そこから会社負担分が控除される過程が可視化され、まるで後出しで差し引かれているかのような違和感を覚えてしまう。この見え方のギャップこそが、誤解の根源になっているのではないかと私たちは考えています。
シミュレーションで検証、手数料率90%と75%はどちらが得か
標準報酬月額の上限を利用したメリット
会社負担分の社会保険料を報酬から控除する仕組みは、一見すると募集人にとって不利に聞こえるかもしれません。しかし、実は社会保険料制度の設計を利用したメリットも存在します。
社会保険料は標準報酬月額に対して累進的に徴収される仕組みですが、標準報酬月額には上限があります。前述の通り、健康保険料は月額1,390,000円、厚生年金保険料は月額650,000円が上限であり、それを超える報酬を得たとしても、支払う社会保険料はそれ以上増えません。これが何を意味するかというと、毎月1,390,000円以上の報酬を継続的に獲得できる募集人にとっては、月200万円稼いでも300万円稼いでも、支払う社会保険料は基本的に一定になるということです。
つまり、会社負担分の社会保険料を報酬額から控除する代わりにコミッション率を高く設定している会社の方が、高額報酬を得ている募集人にとっては実質的な手取り額が増える可能性があるのです。
手数料3,000万円以上を毎年安定して稼ぐようなトップクラスの募集人にとっては、コミッション率が高い(控除率が低い)会社の方が、結果的に手取りが高くなるケースがあると考えられます。この仮説を、実際の数字で検証してみましょう。
獲得代理店手数料600万〜3,000万円で徹底比較
ここからは、協会けんぽ東京支部の令和8年度保険料率(介護保険第2号被保険者に該当する40〜64歳を前提)をもとに、実際にシミュレーションを行った結果をご紹介します。
比較するのは、以下の2つです。
Aパターン:コミッション率90%で、そこから会社負担分の社会保険料を原資から控除する方式
Bパターン:コミッション率75%で、会社負担分の社会保険料は別途会社が負担する方式
それぞれ社会保険料(本人負担分)、所得税、住民税(簡易的に当年課税と仮定)まで加味して、実質的な手取り額を試算しました。なお、これは独身・扶養家族なしを前提とし、給与所得控除・社会保険料控除・基礎控除といった一般的な控除のみを考慮した概算シミュレーションであり、実際の金額は配偶者控除や扶養控除の有無、居住地域の均等割額などにより変動する点にご留意ください。また4月〜6月の歩合部分でも社会保険料は変わってきます。あくまで「実質手取りの傾向をつかむための想定上のシミュレーション」として捉えていただければと思います。
| 獲得代理店手数料 | Aパターン手取り(90%・原資控除) | Bパターン手取り(75%・別途会社負担) | 差額(A−B) |
| 600万円 | 約346.5万円 | 約351.7万円 | −5.3万円 |
| 1,000万円 | 約567.9万円 | 約559.1万円 | +8.8万円 |
| 1,500万円 | 約843.7万円 | 約804.7万円 | +39.0万円 |
| 2,000万円 | 約1,087.1万円 | 約1,020.4万円 | +66.7万円 |
| 3,000万円 | 約1,571.9万円 | 約1,435.1万円 | +136.8万円 |
※(例)獲得代理店手数料1000万円のAパターンでの計算例
前提は40〜64歳(介護保険第2号被保険者)、独身・扶養なし。
1. 支給原資
1,000万円 × 90% = 900万円
2. 標準報酬月額(社保計算のベース)
900万円 ÷ 12 =月75万円
・健康保険の算定基礎:75万円(上限139万円未満なのでそのまま)
・厚生年金の算定基礎:65万円(上限を超えるため65万円で頭打ち)
3. 会社負担分の社会保険料(原資から控除される分)
75万円×5.85%+65万円×9.15%+65万円×0.36%(子ども・子育て拠出金、会社のみ負担)=月10.57万円
年間:約126.8万円
4. 額面給与(原資−会社負担分)
900万円 − 126.8万円 = 約773.2万円
5. 本人負担分の社会保険料
75万円×5.85%+65万円×9.15%=月10.34万円 → 年間約124.0万円
6. 給与所得控除後の給与所得
773.2万円 − 給与所得控除(773.2万円×10%+110万円=187.3万円)=約585.9万円
7. 所得税
課税所得=585.9万円−社保124.0万円−基礎控除58万円=約403.8万円
所得税=403.8万円×20%−42.75万円=約38.0万円(復興特別所得税2.1%込みで約38.8万円)
8. 住民税
課税所得=585.9万円−社保124.0万円−基礎控除43万円=約418.8万円
住民税=418.8万円×10%+均等割5,000円=約42.4万円
9. 手取り
773.2万円 − 124.0万円(社保)− 38.8万円(所得税)− 42.4万円(住民税)=約567.9万円
この結果を見ると、獲得代理店手数料が上がるほどAパターンの手取りが優位になるという、当初の仮説が裏付けられました。獲得代理店手数料3,000万円のケースでは、年間で約137万円の差が生まれています。これは標準報酬月額の上限効果によって、Aパターンの会社負担分社会保険料が頭打ちになる一方、Bパターンでは所得税・住民税の課税ベースとなる額面給与そのものが低く抑えられている影響が大きいと考えられます。高額報酬を稼ぐ募集人ほど、コミッション率の高さがそのまま実質手取りの高さに直結しやすい、ということがこのシミュレーションから見えてきます。
MDRT未満の年収帯ではBパターンが有利なケースも
一方で、注目していただきたいのが獲得代理店手数料600万円のケースです。この水準では、Bパターン(コミッション率75%・会社別途負担)の方が手取りで約5.3万円有利という結果になりました。実際に試算を細かく行うと、獲得代理店手数料が900万円台までの範囲ではBパターンが優位で、1,000万円を超えたあたりでAパターンに逆転する傾向が見られます。
つまり、おおよそMDRT基準(獲得代理店手数料1000万円)かそれ以下の平均生産性の募集人にとっては、必ずしも「控除率が低い=手取りが多い」とは限らないということです。名目上のコミッション率が高いからといって飛びつくのではなく、ご自身の獲得見込み水準に照らして、どちらのパターンが有利になるのかを冷静に見極める視点が、FPを目指す方にも、すでに現場で活躍されている募集人の方にも求められるのではないでしょうか。
これから独立や転職を考えている募集人の方であれば、今の自分の実績だけでなく、3年後・5年後にどの程度の獲得代理店手数料を見込めるのかというキャリアプランまで含めて考えることが大切です。入社時点の年収水準だけでなく、将来的な成長曲線を見据えてコミッション体系を選ぶという視点は、FPがお客様のライフプランを設計する際の考え方と、実はよく似ているのかもしれません。
注意点:見落とされがちな在籍料というコスト
ここまでコミッション率と社会保険料の関係を見てきましたが、実はもう一つ、シミュレーションの数字を根底から覆しかねない要素があります。それが、一部の保険代理店で徴収されている「在籍料」です。在籍料とは、代理店に所属し続けるために毎月一定額を支払う費用のことで、月額5万円、10万円、15万円といった水準で設定している会社が存在します。事務所費用や事務サポート、名刺・システム利用料といった名目で説明されることが多いものの、実質的には募集人の手取りを直接押し下げる固定コストである点は変わりません。
先ほどのシミュレーションで見た通り、獲得代理店手数料2,000万円のケースではAパターン(コミッション率90%・原資から会社負担分社保を控除)の方がBパターンより年間約66.7万円有利、3,000万円のケースでは約136.8万円有利という結果でした。しかし、ここに在籍料を年間換算して差し引くとどうなるでしょうか。月額5万円の在籍料であれば年間60万円、月額10万円であれば年間120万円、月額15万円であれば年間180万円の負担が別途発生し、計算よりさらに手取りを下げる要因になります。
Aパターンが理論上有利になる高年収帯であっても、在籍料の水準次第では、そのメリットが完全に打ち消されてしまう可能性があるということです。
つまり、コミッション率と社会保険料の扱いだけを見て「この会社は自分にとって有利だ」と判断するのは早計であり、在籍料をはじめとした固定費の有無・水準まで含めて、初めて実質的な手取り比較が成立すると言えるでしょう。FPとして報酬シミュレーションをお客様や相談者に提示する際も、こうした見えにくいコストまで洗い出す視点を持てているか、あらためて確認していただきたいポイントです。
制度の抜け穴と代理店選びで本当に見るべきポイント
コミッション率だけで一律に比較すべきではない?
確かに誰にとってもお金は大事です。少しでも多くのお金を得たいと考えるのは人間誰でも一緒であり、これはFP・保険募集人でも世の中の会社員でも一緒です。お客様を長くフォローするためにも、自分自身も生活をしていく必要があります。全てが同じ条件ならば、もちろんコミッション率は高い方が良いでしょう。
しかし実際の会社選び、幸せな人生やキャリアの実現のためには「コミッション率」だけで会社を選ぶことはできないというのが筆者の考えです。実際に職場の退職理由は金銭面の他に労働条件(ex,休日、業務量)や人間関係や社内の連携、教育体制、会社の集客力、理念や価値観、チームワークなどたくさんの要素があります。こういった要素は実際に生産性は大きく変わる、すなわち本質的には収入の大小にも直結するということです。人間は感情の生き物でメンタルや環境が結果を大きく左右するものです。デジタルな比較だけで物事を比較すると大事なことを見失う可能性があります。
転職相談の中にはあまりにコミッションを気にされる方も中にはいますが、手数料が高ければ本当に幸せに働けるのかというと、それが本当に正解なのかはわからない点はあります。
手数料が高い会社の中には横のつながりや教育がないどころか、事務員さんがいないので帳票の整理等も自分たちで行うというような会社も存在します。上述の通り獲得代理店手数料が3000万円でも、実質手取額の差は136万円であり在籍料など他の控除要因も発生します。その差が小さいと捉えるか大きいと捉えるかは人により判断も異なりますが、「コミッション(控除率)に意識が囚われるあまり仕事の大事な本質を見失う」ということがないようにしていただければと思います。
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