【2024年版】1社専属の生命保険会社から生命保険代理店やFP会社に転職する人が多いのはなぜ?5つの理由や業界構造からその真相を解説

FP Wanted!編集部

公開日2024年10月25日

更新日2024年11月15日

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このコラムの内容

1. はじめに

かつては「1社専属の保険営業」が王道とされてきた生命保険業界ですが、近年では生命保険代理店やFP会社への転職を選択する方が増えています。

なぜこのような変化が起きているのでしょうか。単なる待遇面での違いだけではなく、その背景には業界構造の変化やお客様ニーズの多様化など、様々な要因が絡み合っています。

本記事では、保険業界で10年以上の経験を持つ転職アドバイザーの視点から、この潮流の背景にある要因を多角的に解説していきます。転職を検討されている方はもちろん、今後のキャリアについて考えを深めたい方にも参考になる内容をお届けしたいと思います。
(参考コラム)生命保険会社からFP会社や生命保険代理店への転職ってどう?働きがい、給与、案件、教育、商品など多項目で比較

2. 転職トレンドの背景にある5つの理由

2-1. より幅広い商品提案が可能に

1社専属の保険会社では、自社商品のみの提案に限定されます。どんなにお客様に最適な商品が他社にあったとしても、それを提案することができません。これは、お客様本位の営業を心がける保険営業パーソンにとって、大きなジレンマとなっています。

一方、生命保険代理店やFP会社では、複数の保険会社の商品を取り扱うことができます。お客様の状況やニーズに応じて、本当に最適な商品を選んで提案できる環境があります。これは、FPとしての理想的な働き方に近づける大きなメリットと言えるでしょう。

もちろん、一番大事なのは保険商品よりもFP自身の提案力、お客様の人生設計や課題に寄り添った保険商品の提案になっているかという点です。ただしそのような中でも(いきなり具体的な話になりますが)同じ医療保険でもカバーされる病気の範囲が急性心筋梗塞のみなのか、心疾患全体なのか(急性心筋梗塞に加えて狭心症もカバーされる)では万が一の時の保障となる保険を扱う、お客様の幸せを願うFPの立場からすると大きな違いと感じるでしょう。

2-2. 効率的な見込み客開拓

1社専属の保険会社では、基本的に見込み客の開拓を個人で行う必要がある場合が多く見られます。「飛び込み営業」や「知人紹介」が中心の会社も少なくありません。確かに、一部の保険会社ではマーケティングサポートを実施しています。

これに対し、多くの保険代理店やFP会社では、デジタルマーケティングや業務提携を活用した見込み客開拓の仕組みが整っています。WEBサイトからの問い合わせや、SNS経由での集客など、効率的な営業活動をサポートする体制が充実しています。

見込み顧客の発見に時間を使うのか、商談に時間を使うのか、ここはFP本人にとっては大きな違いになります。商談により多くの時間を使った場合、商談スキルが向上すること、またそのお客様と信頼関係が構築できればお客様のご紹介も見込めるでしょう。

2-3. 実践的な教育体制

1社専属の生命保険会社における教育の課題として、必ずしも十分な実務経験を持たない管理職による指導が挙げられます。採用数を増やすことが優先され、営業スキルが十分に培われていない人材が営業所長に登用されているケースも見受けられます。

「たくさんの人と会いましょう」「交流会に参加しましょう」といった一般的なアドバイスだけでは、具体的な成果に結びつきにくいのが現状です。特にフルコミッション制の場合、このような状況では収入の安定化が難しく、結果として離職につながってしまうことも少なくありません。


(参考コラム)生命保険会社の営業所長って何をする人?お給料は??報酬体系や所長のやりがい、よくある悩みについてご紹介

2-4. 総合的な金融サービスニーズへの対応

お客様のニーズは、時代とともに大きく変化しています。かつては「保障」が中心でしたが、現在では資産形成や資産運用のアドバイスを求めるお客様が増えています。NISAや確定拠出年金など、保険以外の金融商品への関心も高まっています。

このような変化に対応するためには、保険だけでなく幅広い金融商品の知識とアドバイス能力が必要です。生命保険代理店やFP会社では、このような総合的な金融サービスを提供できる環境が整っていることが多いのです。

2-5. 魅力的な報酬体系

同じ商品を販売しても、代理店やFP会社の方が報酬が高くなる傾向にあります。これは、代理店やFP会社が経営効率を重視し、可能な限り多くの報酬を社員に還元する方針を取っているためです。(もちろん会社により経営方針や強みは異なりますので違いはあります。)

華やかなオフィス環境よりも、実質的な収入を重視する働き手が増えているのも事実です。特に経験を積んだ営業パーソンにとって、この報酬面での違いは大きな魅力となっています。


3. 業界構造の変化から捉える生命保険代理店やFP会社の台頭

5フォース分析から見る業界動向

保険業界の構造変化を理解するために、マイケル・ポーターの5フォース分析を用いて考えてみましょう。この分析では、業界における①競争企業、②新規参入企業、③代替品、④買い手、⑤売り手、という5つの要因から競争環境を分析します。

現在の保険業界では、特に「売り手(販売チャネル)の交渉力」が強まっています。これは、家電量販店と家電メーカーの関係に似ています。かつては家電メーカーが主導権を握っていましたが、現在では量販店の影響力が強まっているのと同じような変化が、保険業界でも起きているのです。

各保険会社の販売チャネルを見ると、代理店経由の販売が高い割合を占めています。これは、代理店チャネルが効率的な販売ルートとして認識されていることの表れと言えるでしょう。

その結果、保険会社各社は代理店に商品を採用してもらうため、商品開発や販売手数料、その他サポート面での競争を繰り広げています。言わば「代理店による選別」が行われている状況なのです。

このような状況下で、保険会社は代理店向けのサービス向上に力を入れています。商品の開発段階から代理店の意見を取り入れたり、販売支援ツールを充実させたりと、様々な施策を展開しています。

結果として、働く側からすれば1社専属よりも代理店やFP会社に所属した方が、より充実したサポートを受けられる可能性が高くなっているのです。


4. 1社専属モデルの課題

組織の硬直性

大手生命保険会社の多くは、長年築き上げてきた営業体制や価値観を持っています。しかし、その規模の大きさゆえに、業界構造や顧客ニーズの変化に柔軟に対応できていない面があるように思われます。

現在の経営陣が現場で活躍していた時代と、現在では社会環境が大きく異なっています。デジタル化の進展や、お客様の情報収集方法の変化など、様々な面で新しい対応が求められているにもかかわらず、そのスピードが追いついていない状況も見受けられます。

例えば、某保険会社の「ライフプランナーバリュー」に代表されるような、1社専属ならではの価値観があります。この価値観は歴史的に多くの保険会社で踏襲されています。内容は「お客様第一」「プロフェッショナリズム」「生涯のパートナー」といった理念は素晴らしいものです。

しかし、これらの価値観に固執するあまり、新しい営業スタイルや多様化するお客様ニーズへの対応が遅れてしまうケースも見られます。社内で好業績を残す人もいると「自分たちのやり方、価値観は間違っていない」「この価値観、やり方で成績を残せない場合、働き手に問題がある」と皆しているのではないかと感じてしまいます。大事な点は組織全体として以下に平均生産性をあげていくのか、という点だと思いますが上述した組織の硬直性などもあり問題が先送りされているような気がしてなりません。

5. 1社専属保険営業マンの価値観の変化と気づき

1社専属保険会社での価値観形成

1社専属の保険会社では、入社時のリクルート段階から初期トレーニングにかけて、会社の理念や価値観を徹底的に教育することが特徴です。「お客様のために」「最高のサービスを提供する」といった崇高な理念に、多くの方が共感して入社されることでしょう。

特に1社専属の保険会社に入社される方は、素直で真面目な方が多く、会社への忠誠心も強い傾向にあります。これは決して悪いことではなく、むしろプロフェッショナルとして成長するための大切な土台となります。

しかし、キャリアを重ねていく中で、様々な気づきが生まれてきます。例えば、お客様から「他社の商品も検討したい」という要望を受けたり、代理店やFP会社で活躍している元同僚の話を聞いたりする機会があるでしょう。

そうした経験を通じて、「本当にお客様のためになる提案とは何か」「自分のキャリアにとって最善の選択は何か」「本来自分があるべき姿は」といった問いに向き合うようになっていきます。

このような気づきは、決して会社への裏切りではありません。むしろ、プロフェッショナルとしての成長過程で自然に生まれる変化と捉えることができるのではないでしょうか。

お客様への最適な提案を追求する中で、より幅広い選択肢を持ちたいと考えることは、むしろ理想的な姿勢とも言えます。

6. 1社専属保険会社モデルの存在意義

独自の強み

ここまで1社専属モデルの課題について触れてきましたが、決してそれを否定するものではありません。むしろ、1社専属だからこそできる教育や、保険の素晴らしさを伝える取り組み、きめ細かなライフプランニングの作成など、独自の強みがたくさんあります。

特に、保険業界に入られたばかりの方にとって、1社専属の保険会社での経験は非常に貴重なものとなります。基本的な商品知識はもちろん、お客様との接し方、提案の基本など、プロフェッショナルとしての基礎を学ぶ最適な環境と言えるでしょう。

1社専属の保険会社で長く活躍される方の特徴として、以下のような点が挙げられます。

  1. 会社の理念や価値観に深く共感できる方
  2. 1社の商品を深く理解し、その価値を伝えることができる方
  3. 既存のお客様との関係を大切にし、長期的な信頼関係を築ける方
  4. 退職金や福利厚生も重要視される方

このような方々にとって、1社専属のモデルは最適な選択肢となり得ます。

会社の理念に共感し、会社のブランド力や社会的責任も背負って職業人生を全うすることはとても素晴らしいことです。

例えば、昨今アクサ生命さんなどでは企業に対する健康経営の推進や確定拠出年金の導入から運用のサポートに特化することで、社員の満足度や定着率も改善されたように個人的に感じます。1社専属保険会社にはこれからも独自の強みを活かして盛り返してほしいと期待します。

7. これからの展望

多様な選択肢の時代へ

保険業界は、1社専属の保険会社、保険代理店、FP会社など、様々な形態が共存する時代に入っています。それぞれに特徴があり、一概にどれが優れているとは言えません。

現在は確かに、1社専属から代理店やFP会社への転職がトレンドとなっていますが、これは業界の多様化の一つの表れと捉えることができるでしょう。

大切なのは、ご自身の価値観やキャリアビジョンに合った環境を選択することです。お客様にとって最適な提案ができる環境、自身の成長が実感できる環境、そして適切な報酬が得られる環境。これらのバランスを考えながら、選択していく必要があります。

私たち保険業界で働く者にとって最も大切なのは、お客様に価値ある提案ができることです。それを実現できる環境が、1社専属保険会社であれ生命保険代理店やFP会社であれ、それぞれの場所で充実した仕事ができることを願っています。

これからも生命保険業界は変化を続けていくでしょう。その中で、常にお客様のことを第一に考え、自身の理想とする働き方を追求していく。そんな姿勢を持ち続けることが、結果として充実したキャリアにつながっていくのではないでしょうか。

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今回は1社専属の生命保険会社から生命保険代理店やFP会社への転職トレンドについてご説明しました。この業界での独立や転職をご検討の方はファイナンシャルプランナー(FP)転職をご検討の方はぜひご活用ください。保険代理店設立経験者として、代理店独立のカウンセリングも得意としています。

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FP Wanted!編集部

コラムを書いた人

FP Wanted!編集部

MBA (経営管理修士) / 宅建士 / FP2級

資産運用や保険相談で活躍するFPの求人・転職サイト「ファイナンシャルプランナーWanted!」を運営。業界経験者、未経験者にとって参考になるFPのお仕事情報を配信中。キャリア相談、転職相談も随時受付中。また一般の方には全国のFPの中で特に優秀なFP、専門分野に強いFPの紹介サービスも実施中です。

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