FP/保険営業のためのやさしい相続解説(10)遺留分って何?概要や具体例について解説

FP Wanted!編集部

公開日2025年02月07日

更新日2025年02月07日

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このコラムの内容

3/10投資用不動産セミナー 転職インタビュー

1. 遺留分制度を知らないと相続で大きな問題に!

相続対策について、お客様からご相談を受けることは多いのではないでしょうか。「生前贈与で長男に財産を譲りたい」「遺言で次男に会社を継がせたい」など、さまざまなケースがあると思います。しかし、このような対策を考える際に、忘れてはならない重要な制度があります。それが「遺留分」です。

遺留分を考慮せずに相続対策を行うと、せっかくの対策が無駄になってしまうだけでなく、相続後に家族間で深刻なトラブルを引き起こす可能性があります。実際に、近年では遺留分を巡る相続トラブルが増加傾向にあり、2019年の民法改正でも遺留分制度が見直されました。

FPや保険営業として、お客様に適切な相続対策のアドバイスを行うためには、遺留分制度についての正しい理解が欠かせません。

2. 遺留分制度の基礎知識

2-1. 遺留分とは

遺留分とは、被相続人の財産のうち、一定の相続人に保障される最低限の取り分のことです。民法で定められたこの権利は、相続人の生活保障という観点から設けられた制度です。

たとえば、お父様が遺言で「全財産を長男に相続させる」と書いていた場合でも、他の相続人(配偶者や他の子ども)には、法律で定められた一定割合の財産を請求する権利が認められています。これが遺留分です。

2-2. 遺留分の請求権者と割合

遺留分が認められる相続人(遺留分権利者)は以下の通りです。

  • 配偶者
  • 子ども
  • 直系尊属(親・祖父母)※子どもがいない場合のみ

遺留分の割合は、法定相続分の2分の1が基本となります。例えば、配偶者と子どもがいる場合、配偶者の遺留分は4分の1(法定相続分2分の1の半分)、子どもの遺留分は全員合わせて4分の1となります。

3. 具体的なケースで学ぶ遺留分

3-1. 家族構成別の遺留分の計算例

【ケース1:配偶者と子2人の場合】

父親の遺産が1億円の場合

  • 配偶者の遺留分:2,500万円(1億円×1/4)
  • 子2人の遺留分:合計2,500万円(1億円×1/4)、1人当たり1,250万円

【ケース2:配偶者と親がいる場合】

  • 配偶者の遺留分:3分の1
  • 親の遺留分:6分の1

3-2. 遺留分侵害の具体例

生前贈与による侵害の例

お父様が生前に長男に8,000万円の不動産を贈与。その後お父様が他に2,000万円の預貯金を残して亡くなった場合、次男の遺留分が侵害されていることになります。

遺言による侵害の例

1億円の資産がある場合に「全財産を長男に相続させる」という遺言を残すと、配偶者と次男の遺留分を侵害することになります。

4. トラブル予防のためのアドバイス

■ 遺留分を考慮した財産分配プランの作成

相続対策では、遺留分を考慮した財産分配プランの作成が極めて重要です。例えば、事業承継のケースでは、後継者に自社株式を集中させたいものの、それだけでは他の相続人の遺留分を侵害してしまう可能性があります。このような場合、以下のような対策が有効です。

  1. 生命保険を活用し、遺留分権利者に対して現金で補填
  2. 不動産や預貯金など、分割しやすい財産で調整
  3. 計画的な生前贈与による財産分散

特に生命保険は、契約形態によって遺留分算定の基礎財産に含まれない場合があるため、柔軟な財産分配が可能になります。

■ 生前に家族間で話し合いの場を持つことの推奨

相続トラブルの多くは、被相続人の意思が家族に十分伝わっていないことから発生します。そのため、生前のうちに家族全員で話し合いの場を持つことをお勧めしています。

具体的なステップとして

  1. まず個別に各相続人の意向を確認
  2. 公平な立場の専門家(FPや税理士)同席のもと、家族会議を開催
  3. 決定事項を書面で残し、必要に応じて公正証書化

このプロセスを通じて、相続人全員が納得できる形での合意形成を目指します。

■ 必要に応じた遺留分の放棄の検討

状況によっては、遺留分の放棄を検討することも有効な選択肢となります。例えば、既に十分な財産を有している相続人や、事業承継のために特定の相続人に財産を集中させたい場合などです。

ただし、遺留分の放棄には家庭裁判所の許可が必要で、一度放棄すると撤回できないという特徴があります。そのため、以下の点に注意が必要です。

  • 放棄の意思決定前に十分な説明と検討時間の確保
  • 将来の生活設計を踏まえた判断
  • 法的手続きの正確な実施

■ 専門家との連携のタイミング

相続対策は、法律・税務・不動産など多岐にわたる専門知識が必要となります。そのため、以下のようなタイミングでは、適切な専門家との連携が重要です。

  1. 事業承継を含む相続対策の初期段階
  2. 遺言書作成を検討する際
  3. 生前贈与の具体的な検討時
  4. 相続発生後の遺産分割協議の際

特に、FPや保険営業担当者は、お客様と専門家をつなぐコーディネーターとしての役割を担うことが期待されます。各専門家の得意分野を理解し、適切なタイミングで紹介できる関係性を築いておくことをお勧めします。

5. 遺留分を正しく理解して揉め事のない相続対策コーディネートを

遺留分制度は、相続人の権利を保護する重要な制度です。FPや保険営業として、この制度を正しく理解し、お客様に適切なアドバイスを提供することが求められています。

特に以下の点に注意が必要です。

  • 生前贈与や遺言作成時の遺留分への配慮
  • 保険商品を活用した柔軟な財産分配の提案
  • 家族間の円滑なコミュニケーションのサポート

遺留分について正しく理解し、適切な提案ができることは、FP・保険営業としての大きな強みとなります。お客様の信頼を得て、長期的な関係を築いていくためにも、ぜひこの知識を活かしていただければと思います。

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FP Wanted!編集部

MBA (経営管理修士) / 宅建士 / FP2級

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