FP/保険営業のためのやさしい相続解説(1)相続税の計算方法
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このコラムの内容
1.相続税の計算方法について学ぼう!
保険営業やFPに携わる人の中にも相続税について、「複雑で分かりにくい」とお悩みの方も多いのではないでしょうか? 特に保険やファイナンシャルプランニングの実務において、相続税の知識は必要不可欠です。また、相続税の計算方法や考え方を理解することは、お客様への適切な提案にもつながります。今回は、相続税の計算方法を基礎から丁寧に解説していきましょう。
2.相続税の基本的な考え方
相続税の目的と意義
相続税には主に二つの目的があります。一つは富の再分配機能、もう一つは所得税の補完機能です。相続により取得した財産も、本来であれば所得として課税対象となるべきものですが、被相続人の死亡という特殊な事情により、一時に多額の財産が移転することから、特別な税制が設けられています。
相続税の対象となる人
実際どのくらいの人が相続税を支払うことになるのでしょうか?財務省の統計によると、相続が発生して、実際に相続税が課税される方は約9.3%(令和3年時点)です。つまり、100人の方が亡くなられた場合、約9~10人の方に納税義務が発生します。
3.相続税の計算方法:基礎控除から実際の納税まで
課税対象となる財産の範囲
相続税の対象となる財産には、以下のようなものが含まれます。
- 不動産(土地、建物)
- 預貯金、現金
- 有価証券(株式、投資信託など)
- 事業用資産
- 生命保険金(一定額まで非課税)
- 死亡退職金(一定額まで非課税)
- 美術品・骨董品
- ゴルフ会員権などの権利
一方、以下のものは債務や費用として控除することができます。
- 被相続人の債務(住宅ローンなど)
- 葬式費用
- 相続開始後の家屋の解体費用(一定の要件を満たす場合)
基礎控除額の計算
相続税の基礎控除とは、相続税の計算で用いられる非課税枠を指し、課税対象となる相続財産額から一定額を引くことで、相続税を減額できます。 つまり、課税対象となる相続財産の額から基礎控除分を除くことができます。
基礎控除額は以下の式で計算します。
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3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
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たとえば、配偶者と子供2人がいる場合
3,000万円 + (600万円 × 3人) = 4,800万円
ここで注意したいのは、相続放棄をした人も法定相続人の数に含まれるという点です。ただし、相続人が相続開始以前に死亡している場合や、欠格事由に該当する場合は、その人は法定相続人の数には含まれません。
財産の評価方法
相続財産の評価は、原則として「時価」で行います。しかし、実務上は財産の種類によって、次のような評価方法が定められています。
土地の評価
- 路線価方式:路線価 × 補正率
- 倍率方式:固定資産税評価額 × 倍率
建物の評価
- 固定資産税評価額を基準に計算
- 建築費から減価償却費を控除する方法も可能
上場株式の評価
- 原則として、相続開始時の価格
- 課税時期の終値または課税時期の属する月の平均値などから選択可能
4. 相続税額の具体的な計算手順
Step 1:法定相続分による仮の分割
まず、法定相続分に応じて、全体の相続税額を計算します。
たとえば、課税対象額が2億円の場合
- 配偶者:1億円(法定相続分1/2)
- 長男:5,000万円(法定相続分1/4)
- 長女:5,000万円(法定相続分1/4)
Step 2:税率の適用
各取得金額に応じて、以下の税率を適用します。相続税率については以下の早見表をご覧ください。(国税庁のHP参照)
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | ー |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
この場合の法定相続分に基づく納税額は以下のようになります。
配偶者:(1億円×30%)-700万円=6300万円
長男:(5000万円×20%)-200万円=800万円
長女:(5000万円×20%)-200万円=800万円
この一家の相続税額は合計7900万円ということになります。
Step 3:実際の相続割合による再計算
実際の相続割合は、遺産分割協議により法定相続分と異なる割合となることが一般的です。
step2で計算した相続税の金額を相続割合に応じて按分します。
例えば
- 配偶者が80%
- 長女が20%
- 長男が相続を辞退
という場合は、それぞれの割合で相続税額を再計算します。
配偶者:7900万円×80%=6,320万円
長女:7900万円×20%=1,580万円
こちらが相続税の納税金額になります。
5.実務上の重要なポイント
(1) 配偶者の税額軽減
配偶者が相続する場合、以下のいずれか多い金額まで相続税が非課税となります。
- 配偶者の法定相続分
- 1億6,000万円
この制度を活用することで、大幅な節税が可能となる場合があります。
ただし配偶者が亡くなった際の2次相続が発生するので注意が必要でしょう。
(2) 生命保険の活用
死亡保険金には「法定相続人1人あたり500万円まで」という非課税枠があります。たとえば、配偶者と子供2人の場合、1,500万円まで非課税となります。例えば、現金を生命保険に変えるだけで課税対象の財産を1500万円減らせると考えることもできます。
6. 申告・納税に関する実務
(1) 申告期限
相続開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に申告・納税を行う必要があります。
(2) 分割未確定の場合の対応
遺産分割が未確定の場合でも、法定相続分で仮に分割したものとして申告を行い、その後分割が確定した段階で更正の請求または修正申告を行います。
(3) 納税資金の確保
相続税の納付については、以下の方法があります。
- 現金一括納付
- 延納(年賦払い)
- 物納(相続財産による納付)
7.まとめ
相続税の計算は一見複雑に見えますが、基礎控除→課税対象の算出→法定相続分による仮分割→実際の相続割合での再計算という流れを理解すれば、それほど難しくありません。お客様へのアドバイスの際は、この基本的な流れを押さえた上で、個々の状況に応じた具体的な提案ができるようになることが重要です。
特に、生命保険の活用や相続時精算課税制度など、様々な制度を組み合わせることで、より効果的な相続対策が可能となります。日頃から情報収集を心がけ、必要に応じて税理士等の専門家と連携しながら、お客様にとって最適な提案ができるよう、知識を深めていきましょう。
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